政治討論番組テディベアだっこシステム


 おれは政治討論番組テディベアだっこシステムを提案している。
 これは政策討論番組の出演者はみな、ゆったりとしたフリルの服を着て、みんなでくまさんやうさぎさんの抱き枕をぎゅっと抱きしめながら、政治討論をする。それがテディベアだっこシステムのコンセプトだ。無機質な配色のスタジオで、スーツなんていう窮屈な服を着て、デリケートな話題を扱うのは好ましくない。色彩心理学的に言えば、リラックス効果があるパステル色のお部屋が最適だ。かわいいぬいぐるみ、鎮静作用があるハーブティー、皆が一つのポテチ袋に手が届くような距離、間接照明。まんがタイムきららのパジャマパーティーを彷彿とさせる空間を準備することで、建設的な議論を促す。それが目的だ。(ただし出演者がおっさんであることが、このテディベア作戦の最大の難点であろう。)

どうして人は政治の話をするときになると、けんか腰になってしまうのか。それが現代社会最大の謎だ。
 どちらかが完全に論破されるまで殴り合う空気が辛いので、おれは政治の話を極力語りたくなかった。保守になれば野党を、リベラルになれば安倍晋三を、敵と見なして戦い続けなければならない。テレビをつけるとおっさんが醜く争い合っている姿が映る。フルハイビジョンでおっさん同士の争いを見せつけられるだけでも限界なのに、このさき4K,8Kと新技術が普及すれば、おっさんの毛穴が見える高解像度で国会中継を見なければならない。東京オリンピックによる高解像度テレビジョンの販促が予測される今、それだけはなんとしてでも避けなければならないのは明白だろう。

 それを解決するための特効薬が、政治討論番組テディベアだっこシステムである。おっさんを見るのが辛いのなら、モーションキャプチャーで3DCGをリアルタイムで動かせば問題はほとんど解決する。自民党はLINEでスタンプを配布し、小池百合子はwebマーケティングの技能が頭ひとつ突出しており、立憲民主党はSNSの力を最大限に活用して議席を伸ばし、共産党はゆるキャラ路線で攻める。印刷術が教会の権威を相対的に弱め、第二次世界大戦のプロパガンダにラジオが活用された。新技術とトレンドを有効利用するのが政治なのだとしたら、導き出される結論はただひとつ。

各党の党首がバーチャルyoutuber化ではないのか。

もっとゆるーい気持ちで、ふわーっとした空気で、各党トップが政治経済のことをおしゃべりしちゃうのだ。なんというか、「わたしね、新自由主義ちゃんのことが好きなの……」「えーっ! まじで? どこが好きになったの? っていうかこの前まで好きだったナショナリズムちゃんのことは?」とか、「左翼ちゃんはいっつも右翼ちゃんにつっかかってくるけど、米国従属を批判している左翼ちゃんと、GHQの思うがままに戦後日本社会の価値観が歪められたと言っている右翼ちゃんって、もしかしから気が合うんじゃない? 付き合っちゃいなよー♪」「ばっ、馬鹿! あんなやつのこと、だいっきらいなんだから!」「今度はお隣の正恩ちゃんも呼ぼうよー」という、見ているだけで脳味噌が溶けて知能指数が下がり続けるような政治トーク番組が求められている。