たのしいインターネット


 みんなはスマートフォンの基本操作は覚えたかな? これからおれが語るのは、このインターネット世界を生き延びるための技術だ。いま、おまえたちはネギを背負ったカモ以上に食い物にされやすい状態にある。それをまずは認識することだ。これまでにも何人もの人間が、インターネットの養分になった。僅かな快楽と引き替えに、時間も金も、魂も人生も惜しみなく奪われるだけの存在になる。

基本操作を習得しただけのお前らは格好の獲物だ。まずはソーシャルネットワークの魔の手に絡め取られて個人情報を丸裸にされる。その後はソシャゲ漬けになるのか、それとも承認欲求を満たすだけのゾンビになるのか、フェイクニュースで脳を汚染されるのかどうかはおれには分からない。が、じきにお前たちは闇のインターネットの虜囚になり、googleやtwitter、その他webサービスを提供する企業を支える電脳家畜として生きるようになる。
その小さな5インチほどの画面をのぞき込んで、細切れになった言葉を交わし、継続した思考を持てなくなったお前は、感情の赴くままに動くようになる。
だがそのことはどんな情報雑誌にも、スマホ講座にも、インターネットにも記載されてはない。豚にこれから屠殺場にいくのだと丁寧に教えてくれる飼い主はいない。お前は家畜だ。
まずお前が手に持っているスマートフォンだ。これはお前に広告を見せるための機械だ。googleは広告代理店で、androidは人々に広告を見せる機械で、インターネットはお前に広告を見せる場所になった。コンテンツの合間に広告が入っているのではなく、広告を見せるためにコンテンツがある。いかに効率的に広告を見せるのか、ページビューを稼ぐのかを目的にして、すべてのシステムが設計されている。
 SNSサービスと連携して情報をシェア♪というのは、おまえ自身が広告塔になるということだ。もし仮におまえが何らかの政治的思想や信念を持ったとして、日夜SNSを通じて主張を広めようとする。これはおまえ自身が政治活動をしているのではなく、他の誰かの無料広告アカウントに成り下がったということだ。自分自身の考えでやっているのだとしても、結果としてお前は無料で広告をタイムラインに投稿するようになる。広告的存在だ。

 偽りの情報に操られると、下記のような情報を垂れ流すだけの人間になってしまう。
【政治プロパガンダ】それはそうと、次の選挙では岩手共和党に投票してくれ! 岩手独立解放戦線のフェイクニュースに騙されないで! 奴らはロシアから金を貰って活動している反岩手勢力だからだ。【/政治プロパガンダ】
 しかしこれは真実ではない。岩手共和党は日本国政府の傀儡政権にほかならないからだ。
 ポツダム宣言を拒絶して本土決戦に突入した日本は、終戦後に戦勝国によって分割統治された。朝鮮戦争とベトナム戦争の後に、今度は東北が代理戦争の場となった。ソビエト連邦の崩壊によって岩手県は独立国となったが、それは形式上のことに過ぎない。今度は支配者がソビエトから日本に変わっただけだった。
 旧日本軍は第二次世界大戦の時に沖縄を捨て石にしたし、冷戦時代に国際社会は岩手を見捨てた。が、それは天安門事件と同じく、不都合な歴史として闇に葬り去れてしまった。日本語のインターネットは情報封鎖が行われていて、岩手の現状をまったく報道しない。それ故におれが真実を伝えなければならない。
 岩手は未だに日本政府に従属しており、民族自決の権利が侵害されている。

 日本のメディアでは、岩手独立解放戦線が岩手原理主義のテロリストだという印象操作をしている。我々が経済のグローバリゼーションによって困窮した貧困層を洗脳し、自爆テロリストとして育成しているということ。イスラム国、ポゴ・ハラムと並ぶ暴力集団だというプロパガンダを人々に植え付けている。
 岩手は元々、日本の植民地だった。廃藩置県により人為的な国境線が引かれ、饑餓が発生する度に寒村の生娘が苦界に売られる。金山やレアメタル資源が豊富な岩手は略奪の対象となり、日露戦争の時代には玉山金山が抵当にされて軍資金が捻出された。安価な労働力の供給元として、戦後の高度成長期には人狩りや奴隷貿易が行われた。岩手県人は饑餓と寒さに強く、外の県の奴隷よりも従順で扱いやすい。
 岩手奴隷が貨物列車にすし詰めにされて、上野駅の奴隷市場で岩手県民が売り買いされる光景を見たものは多いだろう。人々は我々を金の卵と呼んだ。
 いまこそ岩手県民は誇りを取り戻し、民族自決のために声を上げなければならない。権利は戦って獲得しなければならない。えっ……この世界では日本がポツダム宣言を受諾して終戦したって……そんなはずは……じゃあこの世界はいったい……(砂になって消える)