ゆるゆり♪じみんとう☆おうえんだん!


有名クリエイターが自作のキャラに政治的な言説を喋らせて謝罪に追い込まれていた。応援していたアーティストや漫画家が自分と異なった主義主張を喋る始めるのは、NTRものに通じるショックがある。つまり、好きなアーティストが、自分とは相容れない政治的主張を語ることに快楽を感じるような性癖になったりしないのか心配だ。
愛好している作品のキャラが相容れない政治思想を語るかもしれない。そのときに備えて万全のシミュレーションを重ねておかなければならない。最悪の事態を想定し、対策を考える。これを怠ったが故に第二次世界大戦で敗北し、原発事故が起きる。

もし仮に「ゆるゆり♪じみんとう☆おうえんだん!」が出てきた場合に、私たちは心中穏やかでいられるのか。作中でさくひまが婚姻届を書いていたエピソードがあるから、保守的な結婚観を固持する自民党に肩入れするわけねえだろ!と思うのが道理だとしても、好きなキャラが自分とは違う政治理念を語るのは悲しい。空き屋を占拠してごらく部を作る脱法精神が、安倍政権に通じるものがあると言われればそれまでだ。

大粒の涙を流しながら、「ゆるゆりキャラが自民党を支持するなら仕方が無い。あなたの視線の先にいるのは私じゃないってこと、いつも横顔を見ていたから知っていたんだ……」と潔く身を退く展開は百合漫画では王道だ。なもり先生とゆるゆりキャラがそう決めたんならおれには止める道理がない。
だが、さくひまがおとなしく同じ政治思想を語るのか? 作中でいつも喧嘩している彼女たちである。互いに異なった主張をぶつけ合って、討論し合う。さくひまの二人なら絶対そうなるに違いない。百合漫画での喧嘩は仲直りシーンのための盛大な前振りでしかない。
さくひまが同じ政党を支持するはずがない。さくひまが仲良く肩を組んで「ゆるゆり♪じみんとう☆おうえんだん!」なんてプロパガンダに手を染めるわけないだろ。何年ゆるゆり観てんだ。「ゆるゆり♪じみんとう☆おうえんだん!」は幻影だ。
さくひまなら健全な対話を積み重ねて合議形成をしていく。さくひまの仲は、異なる政治思想を持っているという理由だけで壊れるような脆いものではない。
政治的対立が社会の分断に直結する我々の世界のほうが明らかにおかしい。狂っているのはおれたちであり、この世界だ。
だが、もし仮に「ゆるゆり♪じみんとう☆おうえんだん!」が存在しても、京子ちゃんあたりが生徒会室の備品を壊して、「隠蔽しちゃおう! 自衛隊日報みたいに!」とか言い始める気がする。