GAFAやTwitterは広告主しか見ていない。


広告収入が主な収益源になれば、検索結果が役に立たないものであったほうが都合がいい。検索しても望む結果は得られないし、複雑怪奇なページランキングを理解してSEO対策をするのも骨が折れる。そんなことに労力を使うぐらいならば広告料を払いましょう!……と促すのがインターネット企業の基本戦略だ。
検索結果がノイズだらけになったり、ログが簡単に埋もれるようになれば相対的に広告やプロモーションの価値が上がる。

TwitterなどのSNSでは、無課金ユーザーは知名度や涙ぐましい努力を重ねてフォロワーを増やし、発言力を高めていかなければならないが、金を払えるお客様はそんなことをする必要は無い。金を積んで発信力を買えばいい。
だがそれはカンフル剤で、金を使って発信した情報もすぐに大量のツイートに流れて見えなくなってしまう。影響力を維持するためには企業に広告料を支払って広告枠を買い続けなければならなくなる。
情報が探しにくくて、大量のツイートによってすぐに埋もれて、過去ログの閲覧もままならない不便な環境というのは、IT企業が意図的に放置しているものだ。求める情報にすぐにアクセスできるのなら、わざわざ広告を打つ必要がなくなる。情報へのアクセスを制限して、プレミアムという形で解放する。
プロモーションさえ打ってくれれば、検索結果が汚染されようが、民主主義の基盤が弱体化しようが、フェイクニュースにだまされて銃乱射しようが知ったことでは無い。でも企業のブランドイメージに影響を及ぼさないように対策をしているふりだけはする。おまえらはせいぜいがんばって、プラットフォームの養分としてコンテンツを投稿してくれやー、と、乞食に小銭を投げつけるように、いいね!やFavを与える。
FavやLikeを無から生み出して、擬似貨幣のように流通させる手口はほんとうにいやらしい。中央銀行が紙幣を発行するように、プラットフォーム企業がFavやLikeのシステムを作って、ユーザーの報酬系をハックする。

マイクロブログという形式はコンテンツの回転率を早くして、人々をFavとLikeのサイクルにより深く耽溺させるように設計されている。いちどこのリズムに慣れると、半日後に反応がある遅いメディアでは刺激が足りなくなる。
個人サイトからブログの時代は反応があるまでのスパンが長かった。投稿してから半日後に反応があれば早いほうで、そのあとにぼちぼちと反応が生まれ、ニュースサイトに取り上げられたり、拡散されるようになるまでにタイムラグがあった。
インターネットは秒や分単位のものではなくて、日刊と週刊、数時間単位の時間感覚で動いていた。だがマイクロブログとSNS、スマホの悪魔的合体によって、アウトプットから反応を得るまでの時間が極限まで短くなった。
レスポンスを得られるまでの時間が短くなることで、FavとLikeによってジャンキーになるまでのハードルが下がり、インターネットコンテンツの細切れ化が進んだ。
わざわざ長い文章を書くよりも短文に分けてSNSに投稿したほうが、多くの反応が得られる。そのことで本来ならば長文で書かれるべきものだったコンテンツの多くが、SNS上で細切れのまま投稿されるようになった。

大量のFavやRTを得て、スマホの通知欄が鳴り止まなくなるのはパチンコで大当たりが出たときに似ている。パチンコであれば1玉4円で換金できるが、FavやLikeは無から生み出される。人によっては知名度をマネタイズできるのだが、一般人にとっては他人に認められたという承認欲求を満たすだけのものだ。
クリエイター職であれば、SNSで知名度を上げるのが必要不可欠な戦略なのだが、プラットフォームの都合で過当競争に巻き込まれているように見える。
一企業が生み出したプラットフォームに振り回されて、その中で効率的に振る舞おうとするほどにIT企業の術中に嵌まる。脳みそをハックされた私たちは他者から認められる刺激が忘れられずに、スロットを回すようにしてコンテンツを投稿する。
SNSを活用して集客力を上げよう! セルフプロモーション! SEO対策! マネタイズ! アフィリエイト! そんなことを話せば話すほど、私たちはプラットフォームの奴隷になり、システムを考え出した連中が肥える。 自分の言いたいことは賭博黙示録カイジに書かれているので、その台詞を引用して終わる。借金まみれになったカイジはギャンブル船エスポワールに乗船して、参加者たちと血みどろの戦いを繰り広げる。 運良く助かったカイジだったが、理不尽なシステムを考案した人間への憤りと、それに乗っからざるを得ない自分自身の無力さを嘆く。

『 オレたちが……… 損得に振り回されれば振り回されるほど 血道をあげればあげるほど 結果的にそのゲス野郎の思う壺…… 意のまま…………!悔しくねえのかっ……!悔しくねえのかよっ……!!くそっ……!くそっ……!』
『賭博黙示録カイジ』五巻より