・暗闇男と私。~気候変動VSメスガキわからせてやるおじさん編~


私の心の中には暗闇男(くらやみおとこ)という公序良俗を無視して、おのれの欲望だけを羅針盤にして生きるナイスガイな反社会的パーソナリティが存在している。これはインターネットの闇から生み出された人格であり、決して外側には出せない種類のパーソナリティなのだが、私はこいつのことが嫌いではない。

「環境保護活動をしているグレタちゃんくっそかわいい。アスペで行動力があり、金髪少女で、北欧出身なあたり、オタク受けする属性がそろっているので、てっきりグレタちゃんの美少女イラストを書かれてまとめサイトに転載されると思っていたけど、そんな気配が全くない。
むしろ生意気なメスガキに現実を思い知らせてやる!……と思っているおっさんの多さに辟易としている。なんかこう、えろまんがでありがちな、大人を馬鹿にするませたメスガキに上下関係を叩き込んでやる!という文化の延長線上にグレタちゃん批判があるような気がしてならない。
おれはというと、生意気なメスガキに罵倒されて負けてしまうマゾ向け作品が好きだということがあり、年下の女の子に正論で叩きのめされるのはウェルカムだ。グレタちゃんももっと、〝おじさんたち、雁首並べて二酸化炭素の削減もできないんでちゅか~?www、ほんと、無能なザコ大人ですね~www〟と煽って欲しい。おれはすぐに敗北する」とか思っている。
でも暗闇男は現実の児童ポルノや性犯罪に対しては激しく憤る。「らぶらぶ和姦ロリなんて二次元にしかねえんだよ! 性犯罪者は殺す。おれが性犯罪者になったら略式裁判で死刑にするとか、GPS埋め込むとか、生まれたことを後悔するような刑罰を与えてくれ!頼む! ぎりぎり許されるのは健全なおねロリだ!」という人権感覚を持つ。
「おれたちは人権という概念がなければ人に優しくできないような、アナル未拡張ボーイではないのだ。(※アナル未拡張ボーイ=尻の穴が小さい男) その一線を越えてしまったらただの倫理観の無いキモオタではなくて、自分の快楽のために他人を不幸にする糞野郎になってしまう」……という感覚の話だ。
私は暗闇男がでしゃばり始めると「ちょっと落ち着け。ここはスタバの非喫煙席だぞ。エロマンガの話をするのはやめろ」と諭す。
「アナル開発というものをしてみたい」
だからやめろって言っているだろ。
ここで暗闇男が喋りたいことをあらかた喋り終えたので、今度は自分が口を開く。
「でも、子供と大人、男性と女性という対立は、気候変動に対して何の意味も持たないよね。俎上に載せるべきなのは地球温暖化対策の話であって、子供とか女性といった属性が批判されるのは違和感を覚えるよ。トランプ大統領やプーチン大統領がグレタ・トゥンベリ氏を批判したときには、夢見がちな少女や、優しいが知識の乏しい10代といったフレーズを使ったけど、彼女の主張には何一つして答えていないよね」
「アズレンだとロイヤルの巨乳艦が好きなんだけど、 グラスゴーみたいな露出控えめキャラもいいよね(※スマホいじりながら)。でもアニメ版観てると、激しいアクションで巨乳キャラのクーパー靱帯が切れないかどうか心配になる」
「人の話を聞けよ」
「聞いているよ。おれらは現実に絶望してしまったので、ああいう若い子が希望を抱いていて行動をするのは素直に応援したいよね。あたい、もう心が折れてしまって、何をやっても無駄なんじゃないのかって気持ちに囚われているので、台湾とかそのへんで活きの良い政治青少年がポップするのはみていておもしろい。自分たちが学習性無力感を抱えているからと言って、それを若い奴に押しつける気にはなれんよ」
「ときどきまともなことを言うよね」
「幼児退行ものの催眠音声を聞いたまま解除パートを飛ばしていたら、自分が幼女なんじゃないのかって思い始めたんよ。最初は幼児化退行暗示をかけた後に女児向けアニメを観るという人体実験の途中だったんだが、あたいが大人になったときには地球はどうなっちゃうんだろ?という気持ちがこみ上げてきたんよ。今流行りのEco-anxietyの一種やね。
Eco-anxiety: How does the human mind deal with existential threats? - BBC Science Focus Magazine
おれたちは大人の常識や論理では無くて、もし自分たちがこの時代に生きる青少年ならどのように感じるのかということを、懸命にシミュレートしなければあかんよ。」
……というような脳内対話を行う。これでキャラアイコンがあれば対話型のウェブサイトになる。パーソナリティを分割して、自分の思考を整理するのはいにしえのオタクが編み出した思考法である。脳内にパーソナリティが二つ以上あれば、おのずと自キャラ対談形式になる。
「がんばっている若い子にいちいち突っかかってくるおっさんたちは、これから〝生意気なメスガキに大人常識をわからせてやる性癖マン〟扱いしていい。彼らは生意気なメスガキを力で屈服させたいという性的欲求と、政治的主張の区別ができないかわいそうな生き物で、気候変動や社会改革の話をしているときに〝メスガキを黙らせてやる!〟という感情だけを武器に突っ込んでくる。
彼らはそれがまっとうな政治的主張だと思い込んでいるけど、女性を力で屈服させる快楽を覚えたいだけで、議論の場をただの政治ポルノに変質させてしまう。こういう種族のおっさんたちに〝メスガキわからせてやるおじさん〟みたいな不名誉なレッテルをガンガン貼って、人類を啓蒙していくことしかないよな。
これは気候変動や社会変革だけの問題では無くて、良識ある人類とメスガキわからせてやるおじさんの種族的闘争じゃぞ。そういうわけなので、メスガキをわからせてやる大人パワーを、抑圧的な男権社会の弊害といったフレーズに置き換えたり、催眠音声云々の部分を削除して、子供の視線で環境問題を考えるみたいな、良識ある文章としておれの発言を再構成するのがおまえの役割やぞ。
おれはこれから良い感じの幼児退行催眠音声を探しにいくからこれで今日は終わりだ。じゃっねバーイ☆」
そう言い残して、暗闇男は無意識の底に帰って行った。もうなんかいろいろとだるくなったので、ボイスレコーダーに録音した分をそのまま書き起こして終わりにする。