・嫌韓ヘイト本のコストパフォーマンス。(もしくは政治TCGの可能性について)
ちょっと思うところがあって嫌韓ヘイト本を読んでいたのだが、「論戦をするときに効果的なフレーズを読者に提供する」という点では実用性が高い。「従軍慰安婦は売春婦だ」「植民地支配ではなくて併合だ」といった、単純だが取り回しやすい言説が押さえられている。
将棋の棒銀戦法のようなもので、対策を知らない人間に対して高い破壊力を発揮する。冷静に反論するためには受ける側に知識が必要になるのだけど、準備をしていない状態で「従軍慰安婦がいたという客観的な証拠を出せ」と言われても対応は難しい。
リベラルはヘイト本を低俗なものだと忌避する傾向が強いが、ネット右翼を促成栽培する点では侮れない。「この話題になったら、このフレーズを言えばいい」というテンプレートがあって、嫌韓以外だと「日本はアジア解放のために戦った」とか、「GHQによって反日左翼が日教組を占拠した」といったネット右翼促成栽培パッケージが一通り揃っている。そう考えると、ネット右翼的な言説はコストパフォーマンスの高い政治思想ではないのかと思う。
それに比べるとリベラル的な価値観やトピックは学習コストが高い。問題点を理解するために憲法から原発、基地問題、経済について、手広く学習しなければならない。
嫌韓ヘイトは思想そのものよりも、学習コストの低さによる伝播スピードの速さが長所だ。書かれていることを鸚鵡返しにする支持者を大量生産して、Yahoo!ニュースやTwitter、その他SNSのコメント欄を埋め尽くす物量作戦で攻める。
トレーディングカードゲーム風に言えば低コストの軽量クリーチャーを大量に召還して物量で攻めるウィニー・デッキだ。
以前は高コストのリベラル派政治クリーチャーを召喚して、マスメディアとの連携で発言力を増幅するコンボが有効だったのだが、ネット右翼デッキはマスコミの影響力を弱めつつ、SNSで軽量政治クリーチャーを生み出して高速展開する。リベラル派は後手に周り、民主主義のライフはゼロになる……というのが、昨今の政治トレーディングカードゲーム「ポリティカル・アンド・ギャザリング」のトレンドだった。
以前までは「こんなクソみたいな歴史修正主義なんて誰も信じないよ」と甘く見ていたのだが、内容そのものよりも学習コストや伝播力の方が本体だった。嫌韓ヘイトが受け入れられるのではなくて、感染力が強くて取り扱いやすいという理由で、なんとなくヘイト発言ができてしまうという環境そのものが、ヘイトスピーチの強さなのかも知れない。最近ではそう思っている。
もし対抗するのであれば、トレーディングカードゲームの戦略から学ぶ必要があるのではないのか。相手の行動を制限して勝利を収めるロックデッキ、もしくは呪文を主体にして相手のライフを焼き尽くすバーンデッキなどの戦術の中に、リベラル派が政治トレーディングカードゲーム「ポリティカル・アンド・ギャザリング」を生き延びるヒントが隠されているような気がしないでも無い。
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