劇場版プリキュア!ゴッサムシティはピエロでいっぱい!? みんなの笑顔をとりもどせ!(※映画ジョーカーの感想)


ジョーカーを観た。新聞記者とパラサイトの締めだったので余計に見るのがしんどい。評価は高いし面白いのだが、立て続けに観るには辛気くさい映画三本立てだ。
ジョーカーが出てくるので痛快クライムアクションに違いないと思い込んでいたのだが、『ゴッサムドキュメンタリー、貧困男性は何故ジョーカーになったのか?心の闇に迫る!』だった。
ダークナイトを大爆笑しながら見ていたので今回も笑えるはずだと思っていたが、全体的にしょっぱい作りでジョーカーに同情してしまう。
ダークナイトのジョーカーとは全くの別物だけど、そもそもジョーカーは個人では無くて概念や現象に近いのでは無いのか。仮面を被った彼のフォロワーのうちの誰かが、ダークナイトのジョーカーになったんじゃ無いのかと個人的には考えていた。人の不幸だけが自分の喜びになるようなサイコパス野郎が混じっていて、そいつがジョーカーを襲名してより純化された邪悪の象徴になった。
そう思わないとつじつまが合わないと感じる程度には、この作品で描かれるジョーカーは人間的で優しい。悪の仮面をまとわないと押し潰されてしまうぐらいには弱い。劇場版プリキュアなら確実に終盤で改心している。
観ている途中から脳内でプリキュアが「ジョーカー、あなたの本当の笑顔、私たちが取り戻してあげる!」と叫び初めて大変だった。そのぐらいにはジョーカーが心の底から笑えるようになって欲しかった。

あらゆる物語をプリキュアフィルターを通して鑑賞する特殊スキルが発動して、途中から『劇場版プリキュア!ゴッサムシティはピエロでいっぱい!? みんなの笑顔をとりもどせ!』とかそんな感じの話を幻視していた。
劇場版プリキュアではミラクルライトを振ってプリキュアを応援するし、ジョーカーでは民衆がピエロの仮面をかぶって薄暗い情念に力を与える。「映画を見に来てくれたみんな、マスクをかぶってジョーカーを応援したってな!」というノリなので、方向性は真逆だがだいたい劇場版プリキュアなのだ。
プリキュア=ジョーカーであり、ミラクルライトを振ってプリキュアを応援するおともだち=ピエロの仮面を被ってジョーカーに勇気を与える人々……という点で相似形を描いている。
心の中でプリキュアが、「たくさんの悲しみを知っているあなただから、本当に心の底から人を笑顔にしたいって願えるんだよ」って言ったときに泣いたよね。そんなシーンは幻視だが、ピエロには涙のマークがある。歴代ジョーカーの特殊メイクでことさら涙を強調しているのはジョーカー(2019)だけだ。全編を通して泣き続けているんだ……。