陰府歴程篇(2)ご注文は自殺未遂ですか?


 アルコール依存になっていた。
 皆が想像するような、酒がないと手がふるえるようなアルコール依存症ではなくて、朝に目が覚め瞬間に自分の意識があるのが嫌だという理由で黒霧島と睡眠薬を胃に流し込んで、意識がもうろうとした状態で一日を過ごしているようなアル中だった。アルコールがないと精神的に耐えられなかった。素面の状態がつらい。意識が存在しているという事実そのものが耐えられない。酒を飲んでいるときだけは脳を麻痺させることができたので、積極的に胃に焼酎をぶち込んでいた。精神安定剤と一緒に飲めば効果が倍増するし、眠れない夜もアルコールと睡眠薬を併用すれば安らかな眠りに入れる。意識を切断するには酒に限る! アルコールだけが生の苦しみを和らげてくれる。酒、最高! と思っていたのだが、やっぱり何かから逃れるために飲む酒には破綻が伴うのだった。
 大事なことなのでもう一度繰り返す。逃げるために酒を飲んでいると、遅かれ早かれ破綻する。

おれはご注文はうさぎですか?を鑑賞しながら、睡眠薬をつまみにして酒を飲んでいたのだが、気がついたら病院にいた。その後も退院したのだけれども、また酒と処方薬を大量に飲んで病院に運ばれた。天鳳でひたすら麻雀を打っていたので、リアル雀荘だったら借金をこさえていたかも知れない。
 その後は黄泉巡りとしか言いようのない精神状態だったのだけれども、何とか一時的にではあるが危機は脱した。なんというか俺は自我の病気だった。魂が病んでいた。病院に運ばれなかったら、きっとじわじわと身体がむしばまれて、禁断症状が出ていたと思う。精神依存が酷かった。
 どうやって持ち直したのかを語り始めると、ものすっごい長くなる。でもおれは、死人の国に片足を突っ込んでいた。比喩表現ではなくて、実感のこもった言葉として、おれは死人の国に至る扉の前で順番待ちをしていた。だが、ようやく現世に戻ってきた。これから書くのは、おれが地獄の門を少しばかり開いた時に記録である。

 おれはアルコールと精神安定剤を大量服用して、緊急外来に運ばれた。
 自殺未遂をしたことになっているらしい。
「ああもう全部面倒になった。意識を切りてえな」と思いながら、精神安定剤と睡眠薬を延々と酒で胃に流し込んでいたら、昏睡状態になって救急車を呼ばれた。人生初の救急車デビューではあるのだが完全に記憶が飛んでいる。冷静に受け答えをしたこと、律儀に週刊少年ジャンプを読んでいたらしいことは人から聞いているのだが、何一つとして覚えていない。確か『僕のヒーローアカデミア』でデクと轟君が戦っていたのはかろうじて覚えている。
 酒を飲んでいたときに書いていた文章があるので、それを引用する。当時のライブ感を損なわないために、誤字脱字等の修正はほとんど行っていない。

■助けてココアお姉ちゃん
・人生が辛すぎるのでアルコールと精神安定剤と冷や奴を食べながら、ご注文はうさぎですか?を観ている。脳の奥に直接水瀬いのりの声が響くので心地よい。よし、もうワンシート追加だ。でもそれは新手の自傷行為だって知っているけれども、、俺たちはそれ以外に魂を鎮める方法を知らないのだ。
 この世界に拒絶される感覚を知っているのか。精神安定剤とアルコールとごちうさで俺たちは神に近づく! 俺は、俺たちはごちうさの世界に埋没する。もう酒が入っているので何を書いているのかわからねえ。死ね。特に俺が。この社会に適応できない俺が死ね。助けてココアお姉ちゃん。レキソタン一シートをとれたてホップ一番搾りで流し込んでごちうさを観る。ごちうさは俺を傷つけない。
 この物語はホッジョーであるネイティブアメリカンの言葉で、美と調和、均衡をひとことで表す言葉、ホッジョーである。まんがタイムきららにはホッジョーがある。ホッジョー。
 俺たちは神だ!※しかし神は俺たちを見放した!
 俺は人間のくずだった。周りの人たちは優しい人たちだ。悪意なんてかけらも無い。悪いのは俺で、消え去るべきなのは俺なのだ。でも俺は生きていたい。ご注文はうさぎですか? うさぎは寂しいと死ぬ。すなわち俺を孤独と寂しさでは死なせない。それがご注文はウサギですかのコンセプトだ。
 ごちうさは魂を癒す。魂を癒すものだけがすべてだ。

■その次の日。
 酒、精神安定剤一シート、ご注文はうさぎですか?のコンビネーションに頼っていたら20時間ぐらい時間が飛んでいた。何が起こったのかわからないl最後にご注文はうさぎですか?12話を観ていたのが24日の午前、起きたのか24日の23時半。
そのあとに性懲りもなくごちうさアルコール祭りをやっていたら、緊急病院には込まれた。(※運び込まれた)タイピングがうまく行かない。くすり、アルコールごちうさ。なにかどこかで自殺未遂な気持ちになっていたらしいのでびっくり。文章書けないのでこまる。ぶんしょうを書けないのが宇辛い。(※超辛い)メモぼんやりする。(※目も)エスタークは11たーんまでしか倒せない。

■精神安定剤大量服薬オンライン麻雀編
 たいぴぐんぐがおかしのはしこたま薬を飲んだ副作用です。病院に運ばれて自殺外来みたいなところに連れて行かれて、お。このまま俺は自殺島にでもつれていかれるんじゃないのかどきどきしていた。意識がもうろうとしていてタイピングができない。目がかすむ。おれは自殺をしたかったわけではなく、ごちうさ第四話を観ながら、10シートぐらい抗不安薬との第三のビールを飲んでいただけなので、命に別状はまったくない。確信犯だ。。これで死ぬわけはないだろうというラインを見極めてくすりを飲んでいたので、オールオーケーだ。
この状態でオンライン麻雀をしていたのだけれども、明らかに血管に何らかの薬物を投与された段階での戦いだったのでしんどかった。
もうろうとした意識。どの肺(※牌)を切ったらいいのかわからない。じぶんの番なのかわからないまま時間が過ぎ去っていく……。
 これを抗不安剤アルコール麻雀と呼ぶ。闇の麻雀ゲームだ。

 日記引用はここまでだ。
 ちなみに意識がまだ朦朧とした状態でオンライン麻雀をやっていたのだが、「点数を失う度に、血管に睡眠薬を注入される」というルールで戦っているみたいだった。福本麻雀マンガの主人公気分を味わえる、薬物過剰摂取麻雀である。
 その後は「俺はこのまま不幸な死に方をすればいい」という理由で、精神科の受診から逃げ続けていた。

 心は完全な真っ暗闇の中だった。人類産業廃棄物である自分は、イスラム国に殺された方がマシだ。なんで自分だけがのうのうと生きていて、他の死ななくてもいいような人間が殺されるのか。くっっそ! 死にたいという気持ちは多少和らいだが、特に生きたいという感情湧いてこない。食欲がない。食べ物の味がしない。寝ても悪夢を見るし、起きていても憂鬱に押し潰されそうになる。
 いまこそ完全自殺マニュアルに載っていた最終ウェポンを作るべきときだ。タイマー付きの電源延長ケーブルをamazonから取り寄せ、銅線を剥き出しにして心臓にテープで張り付ける。そうすれば寝ている間に電気ショックで死ねるというお手軽自殺装置である。いまこそこいつの力に頼るべき時が来たのだ! ……というレベルで思い詰めていた。
 気を抜くと僕の中で胎動を始めたネガティブマインドが、「敗残者!敗残者!お前は存在しているだけで誰かを傷つける!お前は人間の屑だ!お前は、お前を信じてくれた人間の期待を裏切り、過剰適応で自分も裏切った! 何度も救いの手は差し伸べられてきたのに、お前が自分自身で手を振り解いたんだ!」と叫んで内心を荒らす。僕の内側に入る悪霊が「君は今すぐに消えるべきだ」と囁いて、それが自分の声だと思ってしまう。
 そんなわけねえだろ畜生!