政治アレルギー日記
政治アレルギーが出る。これは自分の主義主張とは違った異物を身体が受け入れられずに、免疫機能が異物を排除しようとする現象だ。人間の肉体は異物から身を守り、時として排除しようとする免疫機能が備わっている。それが過剰になると、花粉症やアレルギー性の鼻炎が引き起こされる。
それは精神にも当てはまる。ある特定の政治言説を浴びているうちに政治アレルギーの症状が発症してしまう場合が多々ある。俺は安全保障法制の時に憲法アレルギーになった。元から花粉やハウスダストなどのアレルギー体質だったから、政治アレルギーが出るのも時間の問題だったのだろう。
おそらく俺たちの免疫には、他者と容易く同一化しないための免疫機能が組み込まれている。価値観の異なった他者や主張に自分が取り込まれてしまわないように、アレルギー源を攻撃しているのだろう。自己を保つためには必要な機能だが、あまりにもアレルギー源が多いときには免疫反応が過剰に働いてしまう場合がある。
俺は憲法性政治アレルギーになった。政治アレルギーには保守・左翼性アレルギーや人権アレルギー、戦争アレルギーや安倍アレルギーや放射能アレルギーなどがあり、要因が重複する場合も多い。
選挙シーズンになると憲法性のアレルギー物質が大量にメディアから放出されるので、おちおち新聞も見ていられない状態になる。免疫機能が暴走し、政治の話を聞きたくない状態になる。これは比喩でも何でも無く、本当に拒絶感が出る。
政治外来の医者から、「それは政治アレルギーですね。お薬出しておきます。この時期はメディアに政治アレルギー物質が多くなるので、ニュースやネットを閲覧するのは控えてくださいね」と言われた。待合室のおっさんは左翼アレルギーで、日本共産党はソ連コミンテルン残党の巣窟だと延々と俺に語っていたし、同級生は安倍晋三という文字列を見ただけで吐き気がするので辛いと言っていた。政治アレルギーはすでに国民病だし、選挙シーズンが近付くと薬を服用したり、メディアの摂取を控えたりしなければならないので面倒くさい。新聞とテレビとネットは基本的に三大政治アレルギー源と言われ、アニメ以外に鑑賞できるものがなくなる。
政治アレルギーの主症状は、自分とは政治的な見解が異なる相手を延々と口汚く攻撃し続けることだ。自分自身の政治アレルギーが原因で、他者の政治アレルギーを刺激し、その他者が自分の政治アレルギー物質を放出するという悪循環が発生する。右翼アレルギーが現政権を批判し、その影響で左翼アレルギーが野党を批判し、さらにそれが右翼アレルギーを引き起こす。
この状態になると政治外来の隔離病棟に閉じ込められるときもある。しかし、同じような政治アレルギーを持った患者が集まるので、自然とフィルターバブルが発生して政治アレルギーが悪化するケースがある。