催眠百合ニーとは何か、なぜ我々は催眠百合ニーをするのか、我々はどこから来て、どこへ向かうのか。~Track.02 催眠百合ニー深化パート~


『私は黄金の槍を手にする天使の姿を見た。穂先が燃えているように見えるその槍は私の胸元を狙っており、次の瞬間槍が私の身体を貫き通したかのようだった。天使が槍を引き抜いた、あるいは引き抜いたかのように感じられたときに、私は神の大いなる愛による激しい炎に包まれた。私の苦痛はこの上もなく、その場にうずくまってうめき声を上げるほどだった。この苦痛は耐えがたかったが、それ以上に甘美感のほうが勝っており、止めて欲しいとは思わなかった。私の魂はまさしく神そのもので満たされていたからである。感じている苦痛は肉体的なものではなく精神的なものだった。愛情にあふれた愛撫はとても心地よく、そのときの私の魂はまさしく神とともにあった。この素晴らしい体験をもたらしてくれた神の恩寵に対して、私はひざまずいて祈りを捧げた。』

催眠百合ニーとは、催眠音声を聴いてドライオーガズムに達する手法のひとつである。催眠と百合妄想を掛け合わせて、肉体的な快楽よりも幸福感を追求するためのものであり、肉体的な快楽を追求したドライオーガズムとは一線を画する。最初にいっておくが射精には至らない。
通常の催眠音声はドライオーガズムを味わうために制作されている。前立腺や乳首の開発を通じて性感帯の感度を高めていき、射精とは質の異なった絶頂に達する。あるいは催眠状態で脳をハックし、特定の刺激で性的快楽を感じるようにする。
だが催眠百合ニーシステムは「おねえちゃんのことが好きっ!大好きっ!」という幸福感に包まれることを目的としている。ドライオーガズムは精神的な幸福感を増幅させる触媒に過ぎない。催眠音声によって意識の覚醒水準が低下している状態で、百合音声を耳に流し込むことで、「好きっ!大好きっ!」を何倍にも増幅できる。
「おねえちゃんのことが好き!」という想いを全身に溜めて、一気に爆発させる。そこから生み出されるおねえちゃんだいすき核臨界反応からエネルギーを取り出す。
催眠百合ニーが成功すると、「だいすきなおねえちゃんのお声を聴いているだけで、わたし幸せだよ。あたまのなかがふわふわーってなって、おねえちゃんのお声でお耳にえっちなことをされているような気になるよ。おねえちゃん、好きっ!大好き!」といった気持ちに満たされる。
すべてが終わったあとには、おねえちゃん大好き!という多幸感で身体中が満たされ、脳みそはぐちゃぐちゃになる。賢者タイムならぬ慈母タイムと言ってもいい。

・なぜ私は催眠百合ニーを作り出したのか。

なぜ私は催眠百合ニーを作り出したのか。それはドライオーガズムに達したあとに、「私は催眠百合えっちがしたい訳では無い」と気がついたからだった。快楽では無くて幸福感が欲しい。確かにドライオーガズムは気持ちがいいのだが、魂を満たしてくれるわけではない。
自分を女の子だと思い込むことによって絶頂に達する方法については前述したが、女の子メソッドには致命的な弱点があった。催眠音声は男性向けに作ってあるので、催眠の力で自分を女の子だと思い込む方法とは相性が悪い。
英会話リスニングでシャドウイングをする要領で、同人音声ボイスを小声で復唱することにより女の子と自分の魂をシンクロさせる「女の子投影法」は、竿役のおっさんを想像できなくて失敗した。
女体化催眠百合に活路があるような気がしてサンプル音声を漁っていたが、声優が自分好みでは無いので断念した。催眠女体化百合も最終的にはおちんちんをしゃぶられたりするし、ふたなりという設定でアナルを貫かれる場合もある。確かに百合なのだがキャラや声に愛着が湧かずに、「だれ、この女……怖いよ、おねえちゃん……。助けて……。私が好きなのはおねえちゃんだけなのに……」という気分になる。
そのうちNTR展開になって「私にはお姉ちゃんがいるのに……気持ちよくなんか……なるはずが……」という展開が待っていないとも限らないが、そこには愛が無い。愛が無ければ催眠百合ニーは成立しない。(いや、催眠NTR百合ニーシリーズ『おねえちゃん、ごめんなさい。快楽に溺れる私をゆるして。でも、ほんとうに大好きなのはおねえちゃんだから……。』はありではないのか?)
ここで手詰まりに陥った。私がしたいのは見知らぬ女性キャラとの愛のない百合えっちではない。
冷静になって自分の性癖を見つめ直した結果、ドライオーガズムという快楽を感じたいわけでは無くて、「ごしゅじんさまだいすき!」という気持ちで頭がいっぱいになって、大好きすぎて頭の中がとろっとろになって、目はハートマークになり、顔は笑顔でとろけているような、オキシトシンが脳内から過剰に分泌されるような状態が心地よいことに気がつく。
催眠百合ニーは幸福感を求める。人間が生まれつき幸福を求めるのと同じことだ。ドライオーガズムは肉体の快楽を求めるのだが、私が欲しいのは愛だった。
真夜中に悪夢から目を覚ました後で、お姉ちゃんが暖かいココアを作ってくれて、でもまだ怖くて眠れなくて、「怖がらなくていいよ。あなたが眠るまで、お姉ちゃんがぎゅってしていてあげるよ。寝ている人に振動や冷たさを感じさせると、それが夢に影響するんだって。悪い夢を見ても、お姉ちゃんがあなたを守ってあげるよ。だから安心して眠ってね」と言われて、お姉ちゃんの体温、お姉ちゃんの心音、お姉ちゃんの柔らかい腕を感じながら、穏やかな気持ちで眠りにつきたかった。
その着想に至ったときに、ようやく私は催眠百合ニー(全年齢版)を形にできる確信を得た。

・どのようにして催眠百合ニーをするべきか。

催眠百合ニーをするさいには以下の手順をたどる。
あらかじめ百合妄想を練る→催眠に入る→お姉ちゃんがすきっだいすきっ!という気持ちを芽生えさせる→催眠音声のドライオーガズムなどを通して、お姉ちゃんのことが好きっ!という気持ちを増幅させていく。
催眠百合ニーが成功すれば、身体中を幸福感が包み込み、穏やかな気持ちになり、愛に満ちあふれ、目はハートマークになる。心の底から魂が満たされる感覚を催眠百合ニーはあなたに与える。それは射精やドライオーガズムがもたらす肉体的な快楽だけでは決して味わえないものだ。
この時点で「催眠女体化百合でいいんじゃねえのかな……」という気もしてくるのだが、それは軽率な判断だ。**女体化する以前におれはもう、隣に住んでいるおねえちゃんのことが大好きで仕方の無い女の子なのだ。**ひとりっ子だが隣に住んでいるおねえちゃんを実姉のように慕っている。お下がりのお洋服をもらったり、一緒に夏祭りに行ったりして、とっても仲がいい。私はお姉ちゃんのことが大好き! でも、この胸を締め付けるような気持ちは何だろう……?というサイドストーリーをあらかじめ作っておくことは、催眠百合ニーの世界に入り込むには重要だろう。百合姫コミックス換算で五巻分ぐらいはある。弊ブログの読者にとってそういった百合妄想は、頼まれなくてもやっているはずなので省略する。

・催眠百合ニーをチューニングする。

催眠百合ニーはまったくあたらしい性癖だ。ドライオーガズムの情報はあっても、催眠百合ニーを極めようとしているのは、現時点ではこのブログしかない。試行錯誤の連続である。
同人音声を複数同時再生することで擬似的に百合セックスを実現させる技術も試した。A「お耳、舐めてあげるね。いっぱい声を出して気持ちよくなってね」B「ごしゅじんさま……あたま、溶けちゃいそうです……」といった具合に二つの音声を同時再生して、百合音声として脳内に錯覚させるテクノロジーだが、これはまだ実用段階では無い。
催眠百合ニーをするときには、「よし、今日こそ成功させるぞ!」と身構えない方がいい。自分の意思で快楽を求めずに、波が押し寄せるのを待つ。流れに身を委ねて現在に集中する。「だいすきなおねえちゃんとこんなことしているなんて、私、とっても幸せだよぉ……」と思っている間に、自然と感情が昂ぶって、いつの間にか快楽の海に溺れていくのが好ましい。
ゼロか100かで物事を考えて、思い描いた成功に近づけなかったら失敗扱いする。自分で勝手にハードルを上げて、勝手に失望するようなメンタリティに填まり込むことがある。そう思うのは認知が歪んでいる。たとえ失敗したとしても、以前よりも少しうまくいった、ちょっとだけコツをつかんだ……などのささやかな成功体験を地道に積み重ねていくことで、一歩ずつ目的地に向かって進んでいったほうがいい。
結果を求めない。目の前にある現実を受け入れる。完璧主義を目指さない。些細な成功でも自分を褒める。それらはすべて催眠音声に教わったことだ。

催眠百合ニーは私個人に最適化されたものであり、ここに書かれてあるとおりに他人が実行しても同じ効果を得られるわけではない。幸福感を得られるスイートスポットは人によって異なる。
私は百合を媒介にしているが、催眠百合ニーの本質は「好きっ!」という多幸感で身体を満たすことにある。人によっては「ご主人様のことが大好き!」といった具合に、性癖に合わせてチューニングするのもよいだろう。
催眠百合ニー(18禁版)は、最初こそ「だいすきなおねえちゃんと一線を越えられて嬉しいよぉ」という気持ちになるのだが、途中から身体と快楽を貪り合うだけの関係になっているような気がして断念した。
あと催眠百合ニーに没頭しすぎて、同じ声優の男性向け音声作品を聞いているときに「大好きなお姉ちゃんが、男の前であんな嬌声を上げている……! 許せない!」という気持ちになってしまった。一枚壁を隔てた場所でだいすきなおねえちゃんの喘ぎ声を聴きながら、嫉妬と、羨望と、発情と悲しみが入り交じった感情が身体中を駆け巡る。なんで催眠音声でたとえとどかぬ糸だとしてもみたいな感情に襲われているんだ……。

・催眠百合ニーのデメリット

完全無欠に思える催眠百合ニーにもデメリットは存在する。
健全ならぶらぶ百合音源が少ないことだ。対策としては、非百合音源の中から一人称が中性的で、男性器を刺激しない音声を探すというものだが、骨が折れるので現実的ではない。
催眠で全年齢向け、いちゃラブ百合、なおかつ好きな声優とシチュエーションといった条件を完全に満たす作品は、残念ながら無い。女の子ボイスを体得し、ボイスチェンジャーを駆使して自分で録音するか、同人音声サークルを立ち上げるしか道が無くなる。
催眠百合ニーは人類にとって時期尚早だった。催眠マゾ向けおねロリNTR百合を探すのは困難を極める。自分の望む性癖がインターネットで見つからなくなったら、その先は人類にとってフロンティアだ。誰も足を踏み入れたことのない前人未踏の地には地図が無い。あるかどうかも定かでは無い目的地を目出すためには、性癖を羅針盤にして前に進まなければならない。
私の探求はここまでだが、もしも誰かが私の意志を継いでくれるのなら幸いだ。催眠百合ニーの可能性はここで終わるようなものではない。何年かしたら、催眠百合ニーはメジャーなジャンルになって、たくさんの名作が生み出されるようになる。いちゃラブ甘々年の差同棲百合とか、そういう作品でいっぱいになる。
そういう暗示を私はあなたにかける。これから私が10からゼロまで数えると、あなたは催眠百合ニーがしたくて仕方が無くなる。10、9、8……「そう、それはとても気持ちのいいこと……」7、6、5……「ぜったい、さいみんなんて、解いてあげないからー☆」4、3、2……あなたは私の言葉に逆らえない……、1……、ゼロ。