ちょっと思うところがあって嫌韓ヘイト本を読んでいたのだが、「論戦をするときに効果的なフレーズを読者に提供する」という点では実用性が高い。「従軍慰安婦は売春婦だ」「植民地支配ではなくて併合だ」といった、単純だが取り回しやすい言説が押さえられている。
将棋の棒銀戦法のようなもので、対策を知らない人間に対して高い破壊力を発揮する。冷静に反論するためには受ける側に知識が必要になるのだけど、準備をしていない状態で「従軍慰安婦がいたという客観的な証拠を出せ」と言われても対応は難しい。
リベラルはヘイト本を低俗なものだと忌避する傾向が強いが、ネット右翼を促成栽培する点では侮れない。「この話題になったら、このフレーズを言えばいい」というテンプレートがあって、嫌韓以外だと「日本はアジア解放のために戦った」とか、「GHQによって反日左翼が日教組を占拠した」といったネット右翼促成栽培パッケージが一通り揃っている。そう考えると、ネット右翼的な言説はコストパフォーマンスの高い政治思想ではないのかと思う。
・『自由からの逃走』とソーシャル家畜化。
AndroidのGoogle Play StoreやApple Storeを眺めていたのだが、「自分が欲しいものでは無くて、誰が買わせたいと思っている商品が多い」といつも思っている。新しくて、売れ筋で、人気があるコンテンツがトップページに表示されていて、話題の作品を適当につまんでいるだけでもそこそこ時間を潰せる。その一方で消費行動が受動的になっているように思えて、あまりいい気がしない。
インターネットが全体的に「誰かが決めたルール通りに遊ぶことしかできないおもちゃ」になっている。AndroidやiOSはオペレーションシステムであると同時に、企業のエコシステムにユーザーを囲い込むためのもので、消費行動を促す導線が巧みに仕掛けられている。
・Lubuntuに向けた愛の歌。
古いノートパソコンをSSD化してWindows10にアップグレードしたのだが、もう8年以上前の機種なので動作が緩慢で、入力に対する反応が常にワンテンポ遅れる。使えるといえば使えるものの、細かい部分で少しずつストレスが溜まっていく。
我慢できなくなったのでLubuntuを入れてデュアルブートにしたら、実家に帰ってきたような安心感を覚えた。Netbookを使っていた頃からのつきあいである。以前のLXDEはデザインが垢抜けていなかったが、LXQTになってからはスタイリッシュになった。
Lubuntuは触っていて気持ちがいい。機能の豊富さや対応している周辺機器の多さではWindwosには勝てないが、ボタンを押したときにすぐさまレスポンスが返ってくる。Windows 10は動作のたびに「よっこらせ」という声が聞こえてくるような反応だが、Lubuntuは「ご主人さま!了解しました!」という感じだ。
・ちんちんぴろぴろりーん♫教の祈り。
・バカは黙っていろの空気
あるスーパーのコンサルタントが「一番売れない商品を処分して、経営を効率化しましょう!」と提案した。店主は「それはいいアイディアだ。早速その商品を処分しよう……で、コンサルタント君。次に一番売れていない商品は何かね?」
一番売れない商品を処分したら、二番目に売れていなかった商品がワーストになる。それと同じように、役に立たない障害者をこの社会から排除したら、次には生産性が一番低い人間になり、その人たちもいなくなったら次は生産性が二番目に低かった人々が排除の対象になる。
・現実ディズニーランド
ある特定の政治的な立ち位置を採用することに違和感を覚える。
昭和から変わっていない老朽化した左翼思想、戦前の価値観を現在に当てはめようとする懐古的な国家主義、文化の違いを無視して無理矢理日本に輸入されたリベラルや民主主義、「そんな難しいことなんて考えていても答えなんて出ないんだからさー、オリンピックや万博を楽しんで盛り上がろうよ!」という無気力・無関心。
そのいずれかに安住の地を見つけられれば、少しは楽になるのかも知れない。現状に疑問を抱かず、思考停止して、集団の話を乱さないような言動をする。どうせ考えても答えなんか出ないし、デモや投票に行っても何の意味もないから、何も考えないで楽しんだ方がいいよねー☆ いえーい! 日本サイコー! 感動をありがとう! 御国のために死にます!
もし情報テクノロジーとアルゴリズムとIT企業が人々の行動に影響を与えて、民主主義の基盤を切り崩していくような時代でなければ、そういう風に生きたかった。前例のない地球温暖化が破滅的な影響を地球に及ぼし、核兵器が生殺与奪を握っているような時代でなければ、鼻水を垂らして何も考えずに暮らせたはずだ。
答えが出ないまま宙吊りになって、これまで慣れ親しんでいた価値観や思想、宗教をそのまま当てはめるだけでは不十分になっている。それなのにそれ以外のオプションを持たないから、なじみ深い価値観をそのまま2020年以降の世界に当てはめようとする。その行為が思考停止に感じられるので、特定の政治的立ち位置や価値観に対して不信感を覚える。
民主主義、人権、戦前の父権的な社会やマルキシズム、キリスト教。これらが現代でもそこそこ使い物になるものだとしても、考えることを拒否して古い価値観にしがみついているだけなのだとしたら、それは間違っているのだと思う。
インターネットクエスト
催眠食事道・催眠スキルで味覚をブーストして食事をする。
催眠音声から得られるのは「視覚処理に用いていた脳内リソースを別の感覚に回す」技術である。人間の脳は視覚情報の処理に能力の八割を使っているといわれる。催眠音声を聞くときには目を閉じて、視覚処理に使っていた脳内リソースを聴覚や皮膚、あるいは乳首に割り振る。意識を集中させ、感度を高めることで、日常では使っていない五感を活性化させるのが催眠音声で用いられるテクニックだ。
催眠音声で聴覚や乳首を敏感にするのではなくて、味覚や舌の感度を高めたらどうなるのか。それが催眠食事のコンセプトだ。何事も応用なのである。
・陰府歴程篇(10)【バイノーラル】みんな生きているのが辛い。
みんな生きているのが辛い。宗教や政治の話をする前にまず、みんな生きているのが辛いんだなって思うようにしている。辛くなければ神や思想、社会変革を必要とするはずがない。生きているのが辛い、差別されるのが辛い、人間として扱われないのが辛い、とにかく自分でも何が何だかわからないけど辛い。でも直接、「私は辛いです。しんどい。助けて」と言えるほど強いわけでは無いので、「私は正しい、間違っているのは他者や社会だ。このような論理的・倫理的な間違いがあるために私は苦しんでいる。私が苦しむような世界は変えられなければならない」という風に論理で武装する。
神経が図太くないと「わたしは社会的弱者です♪生きていくのが辛いので、みんな助けてねっ!」とは言えない。そう言えるのなら十分に強い。生きていくのが辛くて、これ以上、自分の一番柔らかい部分にローキックを加えられれば簡単に自殺してしまうぐらいに傷つけられている。
傷つけられると徐々に踏ん張れなくなる。健康な人ならちょっとした風邪なら自己免疫が退治してくれるが、弱っていると命に関わる病気になる。心もそれと同じで、普通の人が簡単に耐えられるようなストレスにも潰れてしまって、受け流せるようなこともまともに受け取るぐらいに疲弊する。
私たちに必要なのは「生きているのが辛い」ということをそのまま伝えられる相手だったり、場所ではないのか。男性と女性とでは問題解決の方法が違うと言われる。男性に問題を相談すると、どうすれば解決できるのかという方法論の話になり、女性の場合は感情に共感することを重視すると言われる。
これまでは解決策ばかりを強調しすぎて、共感をおざなりにしてきたのでは?
……ということを同人音声を聴きながら考えていた。
・陰府歴程篇(9)ヤク中☆フレンズ!
有名人の薬物乱用がニュースになるたびに、「ようこそ!あたらしいともだち!失敗してももういちどやり直そう!」という気持ちになる。これもおれがアルコールと処方薬を乱用していたときに先輩のヤク中から受け取ったものだ。おれは生きるのに耐えられなくなって睡眠薬をアルコールで流し込んで、病院に運ばれていた。そのあとにばつの悪い気持ちのままヤク中ミーティングに顔を出す。どのように責められるのか怯えているのだが、ヤク中の先輩たちは「生きてて良かったね!また一日ずつ、薬に頼らなくてもいい日々を重ねていこう!」と優しく接してくれる。これはいたたまれない。駄目な人間だと罵ってくれた方がマシなのだ。
・陰府歴程篇(8)ローグライク的生存
『自傷行為、自殺願望、うつ症状などがあるときには、自分以外の人に助けを求めましょう。うつ症状、孤独感、薬物乱用、病気、人間関係の問題、経済的問題などの理由で悩んでいる方は、セーフティセンターに掲載されている支援機関に相談することができます。』
……というメッセージがインターネットに表示されたときに思うのはただひとつ。うるせえ!てめえに俺の苦しみはわからねえ!!という憤りにも似た感情だけだった。SNSに死にたいと投稿した段階で、運営から自殺防止メッセージが送られてきたり、公的なサポート窓口を案内されるのは個人的には余計なお世話だ。
自殺願望は異常なもので、すぐさま公的な医療機関によって治療されなければならない。そう考えている人間に俺の自殺願望は癒やせない。死にたいときに生者側の価値観で語りかけようとしても、棺桶に片足を突っ込んでいる人間には届かない。
前向きな言葉、明るい笑顔のイラスト、あなたはひとりじゃないよ、周りに相談しよう、医療機関で鬱病を治そう。……と言われても、そういう明るい人間の世界に背を向けたくて自殺したいんだ。